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映画15_9.『スター・ウォーズ──ファントム・メナス』

 待望の『スター・ウォーズ』の前編、『ファントム・メナス』が、五月十九日、アメリカで封切られた。これはルーク・スカイウォーカーの父と判明したダース・ヴェーダー、つまりアナキン・スカイウォーカーの物語で、話は彼が八歳のときから始まる。当日は何百万ものアメリカ人が、勤めや学校を休んで封切りに駆けつけるという。前評判では、『タイタニック』があげた史上最高の国内興収六億ドルを越えると見られている。

 ジョージ・ルーカスは九部作で完結する予定で、『スター・ウォーズ』(七七)、『帝国の逆襲』(八〇)、『ジェダイの逆襲』(八三)の最初の三部作は、九部作の真ん中に位置している。ルーカスは、最後の三部作のことは沈黙している。

 『スター・ウォーズ』の中心主題は、(1)ダース・ヴェーダーとなった父アナキンと息子ルークの父と子の闘い、(2)ルーク一党と帝国との闘い──この二つである。

 (1)には、ルーカスと実父の対立が色濃く反映されている。サンフランシスコ南の農業町モデストーで文房具商をしていたルーカスの父親は、店を継がず、映画制作に憧れる息子を事々に邪魔した。ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』(七三)は、この田舎町での高校時代が基礎になっている。この町は私も二度ほど宿泊した。ルークの名には、ルーカスが折り込まれている。

 (2)には、ルーカスとハリウッドの対立が反映されている。つまり、ハリウッドこそルーカスを潰しにくる恐るべき「帝国」なのだ。

 『スター・ウォーズ』の大成功で、帝国の支配から独立したルーカスは、大好きなサンフランシスコの西郊マリン郡に、その名も「スカイウォーカー牧場」という、社員二千名を擁する撮影所、つまり彼自身の独立王国を構築した。南カリフォルニアのハリウッドに抵抗する、北カリフォルニアの映画拠点には、ルーカスだけでなく、フランシス・コッポラその他のしたたかな独立プロデューサーらががんばっている。

 『ファントム・メナス』は、興収の他にもマーチャンダイジングその他で三十億ドルをルーカスの金庫にもたらす予定で、スカイウォーカー牧場は最強の独立プロとして、ディズニーやタイム・ウォーナー初め巨大化と独占化を強める「闇の帝国」ハリウッドに対してさらなる抵抗を続ける軍資金を得ることになる。
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