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映画8_10.『噂の真相』とクリントン・スキャンダル

 クリントン大統領は、スーダンなどのテロリスト拠点へのミサイル攻撃でモニカ・ルインスキー事件から国民の目をそらそうとした──これがもっぱらのウワサである。

 もう一つのウワサは、ルインスキー事件直前に封切られた『ウワサの真相』という映画に登場する大統領が、クリントンにそっくりなことを仕出かすので、クリントンはこの映画に刺激されたのでは?というものだ。

 『ウワサの真相』では、大統領がホワイトハウス見学のガールスカウトとセックスしちゃう。しかも再選をめざす大統領選を後十一日残すのみという土壇場で、対立相手の政党の候補者陣営からこのスキャンダルを流された。さあ、えらいことになった! トラブル揉み消し専門のホワイトハウス職員(ロバート・デニーロ)は、大統領はアルバニアのテロリストと戦闘をおっ始めたと発表、実は映画のプロデューサー(ダスティン・ホフマン)とぐるになってCGで戦闘場面をでっちあげ、戦火を逃げ惑うアルバニアの少女は駆け出し女優に演じさせ、その映像をメディアに実写フィルムとして流した。その他いろいろやらせを繰り返し、国民はみごと騙され、大統領は首尾よく再選される。

 さて、現実のミサイル攻撃直後の記者会見では、戦果を発表するコーエン国防長官に向かって、「クリントン大統領は『ウワサの真相』を見たのか?」と、もろに聞いた記者までいた。しかしアメリカの国防機構は、大統領の気ままにはならない。複雑な調査と審議過程を経て、やっと大統領が決断を下すのだから、この記者の質問はばかげていた。

 しかし例えば八月十七日など、大陪審で証言し、ついで国民に短いスピーチでモニカとの関係を認めた後、クリントンは国家安全保障会議顧問のサミュエル・バーガーと攻撃計画の再チェックを行い、モニカが再度大陪審で証言した二十日当日、ミサイル攻撃の火蓋を切っているのだ。八月六日には、クリントンがモニカからもらったネクタイをつけて公式の場に出て写真や映像に撮られたことを思うと、クリントン自身がばかげた演出を意図的にやっているとしか思えない。

 ネクタイ以上に話題なのが、クリントンにフェラチオしてやったモニカの胸に迸った精液をもろに受けた<セックス・ドレス>だ。これこそクリントンを降参させた決め手だろう。迸った彼の精液は、発射されたミサイルと、象徴的に重なり合っているのだ。
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